■劇場版 美少女戦士セーラームーンR■
うさぎ達セーラー戦士一行は、平和な時間を植物園で楽しんでいた。
衛は温室の中でわすれな草を見て、子どもの頃に交した約束を不意に思い出す。
「今度は僕が一杯花を持って帰ってくるからね…」
病院の屋上で消えてしまった、不思議な少年の事を。
「永遠の愛って意味もあるんだって…」
わすれな草の花言葉をダシに、キスを迫るうさぎ。
が、覗かれているのに気付いた衛は、温室から逃げる。
青々とした空の下に逃れると、ふいに空が曇って、赤い花びらが空から舞い降っ
てきた。
美しく怪しい景色に見とれていると、花の中から現れた様に一人の青年が。
「待たせてすまない。やっと君に喜んで貰える花を見つけたんだ」
と、衛の手を取って微笑む。
「駄目よ?まもちゃん、あたしの彼氏なんだから…」
突然の怪しい雰囲気に、思わず割って入るうさぎ。
すると衛とは打って変わった冷たい態度で、青年はうさぎを突き飛ばした。
青年は花吹雪と共に、姿を消す。
「フィオレ、まさか…」
衛は深刻な顔をして先に帰ってしまう。
うさぎ達はレイの火川神社の家で、会議になった。
地球に接近中の小惑星から植物のエナジーが感知されていたのだ。
アルテミス達は気にするが、質量が小さい為燃え尽きる事は確実で、
「コケでも生えてんじゃないの?」と問題視されない。
「考え過ぎかなぁ…。ううん、まもちゃんに限ってそんな!」
昼間に会ったあの青年と衛の関係に、頭を悩ますうさぎ。
「衛さんって、男の人にもモテるのね」
うっかり口を滑らせた亜美は、「アラ、言うわね!」とレイに突っ込まれ、
「そういう意味じゃないわよ」と大慌て。皆もノッてしまい会議は中断。
よく考えれば、うさぎは衛のこれまでの事を殆ど知らない。
衛は6歳の時に、交通事故で両親を失ったとだけ聞いている。
いつだったか「寂しかった?」と聞いたうさぎに
「今は寂しくない。うさ子が俺の家族だ。
うさ子と逢うために、俺は一人で待っていた。そんな気がする」
と言ってくれた。
優しい衛の言葉を思い出して、うさぎは衛への気持ちを新にする。
翌朝。街は一変していた。
エナジーを吸い取られた沢山の人が倒れ、操られて襲い掛かってくる。
やむなく鎮圧するレイ達。一輪の赤い花が原因だと亜美が付き止めると同時に、
怪しい花は花妖魔グリシナへと変貌し、セーラー戦士達に襲いかかった。
苦戦して、辛くもやっつける事に成功した処へ、昨日の青年が現れる。
青年は姿を変えた。異星人となった彼の胸には「キセニアン」の花が。
彼はセーラームーンが、昨日の少女である事に気付いた。
セーラー戦士は瞬く間に倒され、フィオレは圧倒的な強さを見せ付ける。
「まもるくんを騙すお前は、念入りに始末してくれる!」
だがその時、紳士服の看板から抜け出たようにタキシード仮面が登場。
すぐに衛だと気付き、再開を喜ぶフィオレに説得を試みるが、
キセニアンの花の力でフィオレは言う事を聞かない。
「この子が君を騙しているんだ!」
切り掛かるフィオレ。タキシード仮面はステッキで応戦するが、
セーラームーンを庇い、フィオレの爪を胸に受けて倒れてしまった。
気を失った彼を、フィオレは連れ去ってしまう。
キセニアンの花は、花自体に力は無いが、
弱い人間に寄生し弱い心を憎しみに代えて邪悪な力を発揮させ、星々を滅ぼす
邪悪な花。
衛を思って涙を流すセーラームーンを、ちびうさが勇気付ける。
「正義の味方がメソメソするな!そんなんじゃまもちゃん助けられないぞ!」
そして、セーラー戦士はテレポートで小惑星へ跳んだ。
衛は小惑星上で、治療用の水晶体に閉じ込められていた。
「思い出したよ、君は本当にいたんだな。子どもの頃の幻なんかじゃなく…」
すっかり思い出した衛。
両親を失って絶望のどん底にいた自分を、励ましてくれたフィオレ。
だがフィオレは地球上では長く生きられず、涙の別れをしたのだった。
衛から別れ際に一輪の薔薇を受け取ったフィオレは、
衛への花を約束して去って行った。
だがフィオレが衛の為に見つけ出した花は、不幸にも邪悪なキセニアンの花だった。
「思ったんだ。まもるくんを一人ぼっちにして放っておいた地球人どもは、
一人残らず滅ぼしてしまおうって」
「僕はそんな事望んじゃいない。フィオレ、どうして君は…!」
咎めようとする衛。しかしキセニアンに取りつかれたフィオレの耳には届かない。
「君に花を渡すのは僕だけだ…」
小惑星上をフィオレの孤独な言葉だけが漂う。
小惑星までやってきたセーラー戦士一行は、花妖魔に手荒い歓迎を受ける。
何とか無事に着陸したものの、惑星上は一面のキセニアンの花。
フィオレは小惑星が地球に近づいた時、キセニアンの花の胞子を地球へ飛ばす
つもりなのだ。
花は地球に満ち、人間は死に絶える事になる。
計画を聞き、セーラー戦士はキセニアンの花妖魔と戦う事に。
一時は逆転しかけるものの、セーラームン以外の四人は
花の蔓に捕らわれてしまった。
電撃を流され苦しむ仲間の姿を前に、武器を放棄するセーラームーン。
フィオレはその優しさが理解できず混乱するが、キセニアンがフィオレと合体して
セーラームーンからエナジーを奪ってしまう。
青息吐息で横たわるセーラームーン。フィオレはとどめを刺そうとするが、
そのフィオレの胸に、一輪の薔薇が――――――。
水晶体から自力で脱出した衛が、愛する人を守る為に投げた一矢だった。
ショックを受け、倒れ込むフィオレ。
「しっかりしなさい、フィオレ。私がついているわ」
キセニアンに励まされるが、惑星上の花は全て枯れてしまう。
「駄目だよ。だってまもるくんが…僕に花をなげつけたんだよ…!」
キセニアンの花が枯れ、地球は救われた。
だが、小惑星は突然軌道を変えた。
「まもるくんは誰にも渡さない。
皆ここで僕と一緒に燃え尽きるんだ…!」
小惑星は地球へ向けて落下のコースを辿り始めた。
命懸けでコースを変えようと、銀水晶を使おうとするセーラームーン。
銀水晶が割れると、うさぎは死んでしまうのだ。
だが、その銀水晶をフィオレの手が掴む。
優しく語り掛けるうさぎに戸惑いながら、銀水晶の輝きを受け、
フィオレは幻覚を見る。
一人ぼっちで泣いていた6歳の衛の元に現れた、2歳のうさぎ。
弟の誕生祝に持ってきた薔薇の花を、うさぎは衛に手渡していた。
そして衛がその花をフィオレに…。
「セーラームン、君は一体…?!」
掴んでいた手を緩めると、銀水晶は花の形をして輝いていた。
「花だ…!」
フィオレの頬に、とめどなく流れる涙。
妖花キセニアンは消滅し、フィオレもまた光りの粒となって消えてしまった。
だが、小惑星の落下は止まらない。
うさぎは銀水晶の力でバリアーを張り、落下のコースを止めようとする。
砕け始める小惑星。
「お願い、銀水晶。あたしに力を貸して!
誰も一人にしない力を…!」
頭上を掠める巨大な破片。
今にも飛ばされそうな強い風。
割れて行く大地。
セレニティになり銀水晶を支えるうさぎを、
エンディミオンになった衛が支える。
背後には援護するセーラー戦士達が。
(そう、あたしは一人じゃない。皆があたしに勇気をくれる。
あたしと銀水晶はもっと強くなれる。もう誰も一人にしない…!)
うさぎの決意を銀水晶に込めて、セーラー戦士が次々エナジーを送る。
輝きを増す銀水晶。
だが銀水晶は割れ、うさぎは事切れた。
物言わぬ躯になったうさぎを前に、セーラー戦士は涙する。
信じられない顔のまま呆然としている衛の元に、フィオレが現れた。
「有難う、僕はまた君とセーラームーンに救われた。
今こそ約束の花を贈ろう」
フィオレは自分のエナジーの花を衛に託し、宇宙へ去って行った。
衛はそれを口移しにうさぎに与える。
胸元のブローチが復活し、うさぎがゆっくり目を開ける。
「言ったでしょ。あたしが皆を守って見せるって…」
「うさぎ!」
「うさぎちゃん!」
うさぎに泣き付くセーラー戦士たち。
笑顔で頷いた衛の頬を、涙が伝った。
END