【扉の向こう】

「…フィオレ、止め…!」
「どうして?止めたら衛くんが辛いだけなのに…?」
「嫌だ!止めてくれ…!」
「いいよ。じゃあ、逃げても構わない」

 狭い室内で、壁に向かって立たされ、衛は後ろから抱き締められていた。
 ここは映画館の男子トイレの一番奥の個室だ。ロングランになった人気映画の上映中で、客はみんなクライマックスの盛り上がりに夢中な頃だ。

 衛もフィオレと二人で、先程まで楽しんでいたのだ。だが、途中で飽きたフィオレが暗闇の中、衛の股間に手を伸ばして悪戯を始めた.。ジッパーを下ろされ、下着の隙間に指を挿れてきて性器を弄る。雁首を擦ったり弾いたりする。
 映画の上映中とあって大声が出せない。むやみに席を動けないので防ぐ事もままならず、結局衛はフィオレの攻撃にエレクトしてしまい、映画の一番良いところでついに退場する羽目になった。

 慌ててトイレに駆け込んだのだが、後を追って来たフィオレに捕まり、個室に押し込まれて鍵をかけられた。そして抱き締められる格好になっている。
 フィオレの手が衛の股間に伸びて、ズボンのベルトを外され、ジッパーを下される。指が開いたジッパーの隙間から入り込んで、下着の上から衛の熱くなった脹らみを撫でた。
 触れられた途端に身体が痙攣して大きく肩が揺れる。背筋を反らせる衛を片手できつく抱き締めると、フィオレは撫でていた指に力を込めて脹らみを握った。

「あ…っ…!」

 その刺激に、衛は更に仰け反った。倒れそうになる身体を抱かえたまま、反った首筋にフィオレは唇を寄せる。
 首から鎖骨へ続く窪みのラインに合わせて舌を這わせると、衛は小さく声を漏らした。その掠れた微かな声音が可愛くて、フィオレは震える衛の耳たぶに口付けると、耳の窪みの奥も舌先で舐めた。

「あ…。んん…っ!」

 普段では聴くことのない艶のある吐息が衛の喉から漏れる。フィオレはその喘ぎを楽しみながらも、指の動きを止めることなく衛に快楽の刺激を与え続けた。
 下着をゆっくりとずらしながら、衛の熱くなったものを露にする。ズボンが膝まで落ち、下着が脱がされていくのを抵抗出来ずに、衛はされるがままに従った。

「あれ…?逃げないの?」
「……離せ、…動けない…」
「ここ、狭いんだもん。衛くん、ボクを押し退けてじゃないと逃げられないよ?離して欲しければ、そうしなよ」
「…フィオレ…、あ…」

 すっかり下半身を裸にされ、勃ち上がった性器を握られて、衛は身動きが取れなかった。フィオレは衛の硬くなった欲望にずっと刺激を与え続けている。

「駄目…だ…っ!フィオ…レ、もう…出る…っ」
「まだ早いよ。もう少し我慢して?」

 解放を制するように、フィオレの指が付根を強く握り締めた。

「あぅっ!」

 力を込めて握られ、その圧迫で解放感が押し戻された。既に零れて滑んだ先端の割れた窪みに指が入り込んで、爪先が痛みを加える。出口を封じられ、痛みと焦燥が下半身を揺すった。

「離し…て、くれ」
「このまま指で擦って欲しい?」

 小さく衛は頷く。だがフィオレは握る指の力を弛めなかった。

「でも、それじゃ早くイケるけど、つまんないだろ?」
「フィオレ…、嫌だ…!」
「だって衛くん、こっちから両方で感じる方が好きだよねぇ?そうしようよ」

 衛は両手を壁について下半身の疼きに耐えている。フィオレは身体を支えていたもう片方の手を、衛の腰から尻に滑らせると、柔らかな肌を撫でた。

「…は…あ。…もう、我慢出来ない…」
「駄目。ほら、舐めてよ、衛くん」

 尻から離れた手で衛の顎を掴むと、喘ぎながら半開きになっている衛の口に指を差し込む。

「ン…!んんっ」

 素直に衛の唇が窄み、指をしゃぶる。舌が指先を濡らし、唾液が口の端から零れた。
 ぺちゃぺちゃと音を立てて、衛は咥内に挿り込んで来る指を一本一本吸い上げる。
「ん…ふ…」
「そう。こうしなきゃ痛いの、覚えたんだね」

 時折喉の近くまで押し入って来る爪先に噎せながら、衛はフィオレの細い指を軽く噛み、舌を絡ませた。顎を掴んでいたフィオレの掌も、指から伝う唾液で濡れていく。

「上手に準備出来たじゃないか」
「あ…んぅ」

 衛の舌が絡みついた指を唇から外すと、衛は開いた口から唾液の糸を垂らして小さく呼吸した。焦燥に眉を顰めた表情に喘ぎが混じる。フィオレは衛の尻の双丘の隙間に、衛の唾液で濡れた指先を捩り込ませた。

「−−−あ…っ!!」

 先程と同じように衛の身体が反応する。倒れ込むのを我慢している膝が震えた。

「うっ…、あっ…!」

 フィオレの指が衛の内側へと埋もれて行く。押し出そうと抵抗して絡む内壁の肉を、指先がゆっくりとこじ開けていく。

「ん、あっ…、ん!」

 指が徐々に奥へと挿り込んでいく動きに衛は反応した。指はただ埋もれていくだけではない。ゆっくりと内壁を掻き回され、新たな快楽を齎していく。

「フィ…オレ…!」

 我慢出来ない。既に性器に直接与えられた快感を我慢させられ、解放も封じられている。これ以上焦らされると、どうにかなりそうだった。

「もう…、頼むから」
「わかった。衛くんのここ…、だいぶ慣れたね?ボクのを挿れても大丈夫だよね?」
「…うん」

 声が掠れて震える。衛は何度も頷いた。

「本当はボクのも挿り易くしてくれると嬉しいんだけど、そんな余裕ないか。…ここ、場所も狭いしね」
「フィオ…レ…、は、やく…」
「衛くん、ほら、ちょっと腰を上げて?」

 言われるままに衛は腰を後ろに突き出した。封じられた射精に焦らされ、最早抵抗など忘れている。

「衛くん…、良いよ、君。どんどん淫らになっていってる」
「…ん」

 前屈みになる衛の身体を、腰を押さえて引き寄せる。片手は衛を握ったまま、まだ解放を許さない。
 もう片方の手で自分自身を衛の双丘の合間に宛がうと、フィオレは一気に衛の身体を引き寄せた。

「−−−−あ…!!」

 興奮して勃ち上がっていたフィオレの性器が、狭い場所に捩り込まれた。
 指よりずっと大きな塊を受け止めて、衛が悲鳴を上げる。だが、仰け反った喉から漏れたのは、掠れた喘ぎだった。  
 痛みと同時に内壁の奥が刺激され、指の届かなかった場所に熱さが染み出して来た。むず痒い感覚が衛の下腹を包み込む。

「あ…、ん、あっ!…あぅ!!」

 フィオレは挿り込んだ直後から、激しく衛を突き上げた。

「あ…、待て…、ひっ…!」

 いつもなら、もっとじっくりと衛を攻め上げ、もっとゆっくりと解放に向かわせてくれるのだが、今は余裕を与えなかった。

「うっ!…あ、フィオレ!」

 壁に手をついて身体を支え、後ろから突き上げられる刺激に耐える。
 慣れた身体の痛みはすぐに薄れ、気持ち良さを感じてくる。呼吸が喘ぎとなって口から漏れる。フィオレはまだ解放させてくれない。

「あ、はぁ…」
「・・・衛くん、いい感じ」
「んっ・・・!あぁっ!」
「立ったまま突き上げられるの、好き?・・・すごく締め付けてくる、ほら」
「あ--!!あ・・・っ!」

 立ったままの姿勢だと、崩れ落ちそうな頼りない足に力を入れるので、尻の辺りの筋肉が収縮するらしい。衛が倒れ込む自分を堪えようとする程、フィオレは喜んで突き上げる。

「いいよ、衛くん」
「あ…、もっと…、ゆっく…り」
「こう…?」
「あぅっ!…んんっ!」

 わざと大きく身を動かす。衛は激しく突かれて背を海老反らせた。足の爪先からこめかみにまで、快感が走り抜ける。だがフィオレの手がペニスの根元を強く握り締め、指が先を押さえ込んで射精を許してくれない。

「…手、離…せよ」
「まだ、駄目」
「い…嫌だ…、もう」
「…待てないの?」

 先程のように何度も頷いて懇願する。

「もうちょっと我慢出来るようにならなくちゃ。…それともこんなふうに抱かれて、いつもより興奮してる?」
「あ…、」

 フィオレは意地悪く言葉でも攻めて来る。既に先走りで濡れた先端を親指で押さえ、人差し指は雁首の溝を撫でその滑りを楽しんでいる。突き上げている最中だと言うのに、フィオレはまだ余裕を感じさせた。

「ん…、あ、あぁ!」
「・・・・・・・・・ん?」」

 突き上げていた律動を、不意にフィオレが止めた。

「……」
「…フィオ…レ?」

 唐突に止んだ行為に、衛は不安気にフィオレを振り返る。その衛の耳をそっと舌をで舐め上げ、びくりと反応した首筋にも口付けて、フィオレはそっと囁いた。

「…衛くん、どうしよう。誰か入って来たみたいだよ?」
「…え?」

 呆然とした衛の耳に、確かに誰かが用を足す音が届いた。

「え、ええっ!?」

 映画は最終回で、ロビーに次回待ちの客は居ない。クライマックスの最中だから抜け出す観客も少ない筈だが利用者は当然居るだろう。
 意識を失くす寸前にまで追い込まれていた衛が、フィオレの言葉で理性を取り戻した。昂揚した頬が更に紅く染まる。

「…困っちゃった?」
「は、離せ!」
ねぇ、今イカせてあげようか」
「な、何考えて・・・!」
「勿体ないけど、君のイク時の可愛い声を、特別に今そこに居る誰かに聞かせちゃう?」
「ばっ…馬鹿!」

 小声で耳元に語り掛けるフィオレに、同じく衛も小声で返す。フィオレは衛の頬や首筋に唇を這わせ、舌で舐め続ける。

「は・・・、離せってば・・・!んっ!」
「衛くん、ちゃんと我慢出来るかなぁ?」

「・・・何・・・、フィオレ?」 

 途端にフィオレは激しく動きを再開した。

「−−−ひぁっ!」

 しかも同時に、固く握り締めていた衛の性器を離す。離された途端に、張り詰めて勃ち上がっている衛自身は震えた。

「あ…!は…!」
「…まもる、くん」
「あ、…あっ、あっ!!」

 内側を突き上げられる快感に、我慢してきた全てが押し出されるように放出されてしまいそうなのを必死に堪える。

「…んんっ!」

 自然と目尻に涙が溜まる。今度は自分の意思で解放を堪えさせられ、漏れる声を必死に飲み込む。足ががくがく震え、それは限界に近かった。
「あ…、あ、ん…っ!」
「…どう?」
「…だ…め、あっ!…もう…あ…ん」

ついに我慢し切れなくなり、衛は先端から精液を迸らせる。

「…は…、あ…っ!」
「衛くん。いいよ、もう。行っちゃった、誰も居なくなったみたい」
「−−−−っ!!」

 フィオレの言葉に救われる。許しを得て、衛は途端に身体を撓らせ、射精した。便器の水溜りに白濁した精液がぽたぽたと音を立てて落ちる。

「は…あっ」

 衛は全身の力が抜けたように大きく呼吸した。フィオレを受け挿れ、突き動かされている最中だと言うのに、刺激は薄れて何より解放感に喜びを感じた。

「…はぁっ、…あっ」
「まだだよ、衛くん!」

 力を失って倒れ込む身体を抱きかかえると、フィオレは便座を閉じて蓋の上に衛の上半身を乗せた。腕の上に胸がうつ伏せるような姿勢になった衛は、腰を引かれて尻を突き出す格好になる。

「あ…、んふっ!」
「いいよ、衛くん。この方が…いい」

 立ったままよりも、、ずっと突き上げるのが楽になる。フィオレは動きを早めた。

「ん、あっ!あ!」

 フィオレの律動に衛は再び快感を覚えて、余韻を擽られて喘ぎを漏らす。

「ふっ…、んんっ、あ、フィオレ…!」
「−−−んっ!」

 漸くフィオレも昇り詰め、衛の内に射精した。生温い感触が衛にも伝わる。

「−−−は、ぁ…」

 欲望を放って恍惚としたフィオレが大きく肩で呼吸を整える。衛の内側から抜け出すと、漏れた精液が衛の腿を伝い落ちた。

「衛くん…大丈夫?」
「……」

 衛の身体に覆い被さるようにして耳たぶと頬にキスをする。衛は避けることはなく受け止めたが、言葉は返さなかった。

「…怒ってるの?」
「……」
「こんな場所でやっちゃったから?あ、ごめん。ボク、内に出しちゃったから?だって、服にかけたら困るだろうと思って」
「……」
「衛くぅん。…でも、ここに入ったのは衛くんの方だよ?」
「…ここに追い詰めたのも、追い掛けて来て無理やり入って来たのもお前じゃないか!」
「ボクはどこでも構わなかったんだけど。衛くんとやれたらどこだって♪」
「……」
「じゃあ、今度はホテルに行こうよ。ね、さっきみたいに声を我慢するのって、辛かっただろ?思いっ切り声出して大丈夫なとこに行こうよ、ね」
「馬鹿…」

 衛は呆れて身を起こした。内から溢れた精液が一筋、太腿を流れる。
 ズボンのジッパーを上げるフィオレを横目に、衛は気持ち悪そうに顔を顰めながら、下着を持ち上げようとした。
 その動作を邪魔するようにフィオレは背後から衛を抱きしめる。そしてまだ露になったままの、濡れた衛の性器に再び指を這わせた。

「あ、こら!」
「汚れちゃったね」
「離せよ、」
「でも、このままじゃ帰れないだろ?」
「フィオレ!」

 下着とズボンが足に絡まって上手く身動きの取れぬ衛を、フィオレは簡単に抱えて向きを変えさせた。そして先程閉じた便座を再び開くと、力の入らぬ衛を腰掛けさせる。

「…フィオレ?」
「綺麗にしてあげるよ」

 フィオレは床に膝を付き、衛の性器を握り締めた。狭い場所なので、衛の両足の間に身体を収める格好になり、丁度股間に顔を埋められる。フィオレは柔らかくなった衛自身を口に咥えた。

「フィ、フィオレッ!」
「んんっ…!」


 フィオレの舌が咥えた衛を愛撫する。衛が放った精液を舐め取りながらも、更に唾で濡らしていく。

「…フィオ…!や、やめ…!」

 しゃぶる音が衛の耳にぴちゃぴちゃと淫猥な響きとなって伝わる。雁首の先から根元まで、フィオレは丹念に舌を這わせ、同時に指が袋も揉み扱く。射精の後に萎えたものが、もう一度硬くなり、既に勃ち上がってしまっている。

「やめ…!フィオレ…!」
「…動かないで。ちゃんと舐めて汚れを綺麗にしてあげるから。それに内に出したボクのも出さなきゃね。衛くん、気持ち悪いでしょ」
「…あっ!」

 上向きに変った性器を咥えたまま、フィオレはその向こうにある双丘の狭間に指を伸ばした。先程の行為と便器に座らされた格好のせいで、入口が拡張している。内側から零れた精液がぬるぬるして、指は簡単に奥へと挿り込んだ。

「…あっ!何…!」

 指を抜き差しされて、少しずつ内壁から精液が漏れ出て来る。一度にではなく、指で何度も掻き出され、とろりと腿を伝う感触が気色悪い。何より他人にその始末をして貰う事に恥辱を感じる。

「よせ…!自分でやるから、離せよ…!」
「動かないで。痛いなぁ」

 既に下半身に力が入らないのか、衛はフィオレを押し退けて立ち上がる事が出来ぬ様子だった。
 せめてもの抵抗として、フィオレの髪の毛を掴んで引き剥がそうとする。

「んんっ…!…あっ!」
「衛くん。さっきいっぱい出したのに、もうこんなになってる」  
「や、嫌だ…」


 性器をしゃぶられる刺激だけじゃなく、指が内側を掻き回す感触も伴って、行為の後で敏感になっていた性感帯は再度反応した。衛の膝は震え、呼吸が荒くなっていく。

「ん…ふっ!」
「まだ充分イケそうだね。また辛くなってきた…?」
「…!」
「いいよ。何度でもイカせてあげるから」

 フィオレは衛が放った精液を舐め取った後、既に自分の唾液で衛のペニスを濡らしていく。口を窄めて圧迫しては、溝に細かく舌先を這わせる。射精を我慢させられた先程と違って、気持ち良い快感が股間から全身に伝わった。衛は素直に喘ぎ声を漏らした。

「あ…、んんっ」
「あれ?もうイっちゃいそう…?」
「…ん、だって…」

 指がアナルを弄るのが堪らない。ぐちゅぐちゅと音を立てて、入り口付近から奥まで何度も指が掻き回す。一番感じる部分に時々つま先がぶつかると、それだけで前が反応する。

「あふっ、あ…んっ!」

 同時に刺激を与えられると一気に解放に導かれていく。
 いつも二度目からの衛は結構開き直る。一度放った後では既に淫らに声を漏らしていた。
「ふ…、あっ、フィオ…レ。…もう」
「……」

 フィオレはしゃぶるのを止めない。このままではフィオレの咥内に放出してしまう。
 扉に届く足を思い切り突っ張らせて、衛は最後の理性を手放すまいとして耐えた。

「放…せ、もういいから…」
「……」
「…フィオレ…っ」
「---−−−あ、」

 その時、大きく洗面所の扉が開く音が響いた。
 大勢の足音や話し声が一気に流れて来る。その喧騒は今度は二人に同時に伝わった。どうやら映画が終了して、客がロビーに出て来たらしい。

「……!!」

 衛が慌てて身体を引き攣らせる。フィオレは僅かに顔を顰めたが、すぐに行為を再開した。
「わ…、馬鹿っ!止め…ろって!」
「どうして?」
「だって…、人が」
「だからって、このまま出て行ける訳ないだろ?」
「……んっ」

 小声で話しながらも、フィオレの指は弛んだ衛の入口を弄ぶ。二本の指が楽に出入りしていく。

「や、・・・止めろ」
「また我慢するの?もうこんなだよ。辛いだけなのに」
「…でも…!」
「イっちゃった方が楽だよ。ね、今度は君の声、聞かれちゃうかな?」

 衛は反射的に手で自分の口を塞いだ。恥ずかしさに逆に反応して、塞いだ途端に声が漏れ、呼吸を飲み込んだ。

「……ん!」
「ねぇ、教えてあげようか?君、イっちゃう時の可愛い声ってね、結構大きいんだよ?」
「え…?う、嘘だっ!」

 羞恥に衛の頬は真っ赤に染まった。

「ま、僕だけが知ってる事だけどさ」
「…ち、違…!」
「違うの?じゃあ、声出しても聞こえないかも知れないよ」

 ニヤニヤと笑いながらフィオレは楽しそうに衛をしゃぶる。その舌の動きに、衛の膝はびくびくと震えた。もう射精する寸前にまで負い込まれている。
 否定しながらも、衛は咄嗟にシャツの裾を掴んで口に咥えた。歯で噛み締める。こうすれば、手で口を封じるよりは声を押さえられる。

「…んっ!…んんっ!」
「わ…、衛くん、可愛いなぁ」
「…んっ」

 フィオレの視線が胸元に注がれる。裾を口で咥えたことでシャツがたくし上げられ、乳首が覗いている。既に全身が快楽の焦燥感に包まれている。触られていなくても、衛の胸の突起は固く勃っている。
 もうすぐどちらかの指が、この突起を弄るだろう。フィオレの視線がそれを訴えている。フィオレは衛が乳首を摘んで弄られると感じてしまう事を良く知っている。

「んふっ…」

 ペニスを咥えられて扱かれ、同時にアナルを弄られている。こんな場所でこんなふうに前と後ろを同時に刺激され、声を封じられて射精を我慢している。扉一枚隔てたすぐ傍には、見知らぬ他人が大勢居る。堪えられない行為を自分は受諾している。

「ん…!んん---っ!」
「ふふっ」
「んぁっ!……んっ!!」

 衛は羞恥に興奮しながら、身を振るわせた。ついに我慢仕切れずにフィオレの咥内に射精する。
 フィオレの舌に促されて、どくどくと精液が彼の口の中に放たれていくのを感じながら、衛はだらしなく身体の力を抜いた。

「…ん、あ…んっ。は…あっ…」

 咥えていたシャツの裾が、唾液に濡れて口から落ちる。しゃくり上げるような喘ぎが小さく断続的に漏れ、胸が大きく呼吸を繰り返した。扉の向こうの声や水音が耳元を擽るが、衛にはもうどうでも良い事だった。

「…ん。気持ち良かった?衛くん」
「……」
「まだ当分、ここから出れそうにないみたいだし。…ねぇ、次はもう一度僕もイカせて…?」
「…うん」

 フィオレは膝を起こし、嬉しそうに衛の身体を抱きしめると、シャツの裾から手を入れ、衛の突起した乳首を指で摘んだ。脱力した衛は柔順に身を任せて来る。

 扉の向こうの喧騒が遠く霞む。衛は再びフィオレを受入れる為に、狭い場所で大きく足を開いた。

■ END ■ 



 この最低な話には、へのさんとの思い出が(笑) 思い出はこちら。  gyallalyを見る

 まもるたんで初めて書いたエロがこれです。初めて書いたのが公衆便所とは、侮れませんよ、自分。
 当初書いたものに加筆修正しました。
 なので、狭い場所にも関わらずラウンド多くなってしまいました。この後一体いつまで続けたんでしょう?(笑)
 それにしても、何だか一緒にはイケない二人のようです(笑)
     >゜))))彡

 

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