【パジャマ】

「あ…んんっ」

 我慢してても、どうしても声が漏れてしまう。
 痛みを堪えるより、気持ち良さに思わず鼻をついて出てしまう吐息みたいな声を押さえる方がずっと難しい。
 一度漏れてしまえば、もう止まらない。

 自分の声を聞いてしまうと恥ずかしくて堪らない。
 聞かないようにしても、どうしても耳に飛び込んで来る。甘く媚びたような自分の知らない声。
 自分の声に耳を犯される。

「う…、あ…ん」

 でも、この押し上げて来る快感をどうしても我慢出来ない。気持ち良い・・・!

 オレは自分のベッドに腰を下ろしている。
 パジャマのズボンと下着を片方だけ足首まで落として、大きく足を開いている。

 フィオレは床に座って、オレの身体の間に身を乗り出して、さっきからオレを咥えていた。
 フィオレの舌が肉棒を這い回る。口を窄めては放すのを繰り返す。唾液の混じるしゃぶる音が、ぺちゃぺちゃと淫猥に響いている。

「気持ち良い?」
「……ん」

 尋くまでも無いことをいつも確かめる。
 すっかり反応して勃ち上がったものを見れば判るだろうに、必ずオレに認めさせる。

 フィオレのフェラチオは上手い。
 どこでこんなテクニックを身につけたのか、気持ち良く感じるポイントをきちんと捕えて適度な早さで刺激する。

 オレが以前経験したプロの女の子より抜群に上手い。
 同じ男だからなのかな。絶対に良いところを極めている。

 でもオレはこんなに上手くないと思う。
 …そりゃオレだって随分としゃぶるのは上手くなったと思うけど、フィオレはもっと余裕のある表情をしてる。
 オレみたいに大きな声出さないし。

 オレがこんなに感じてしまうのは、フィオレが上手過ぎるからだ。
 オレが感じ易いせいじゃない。あいつが…。

 そう…。こんなふうに雁首の溝の隙間に舌入れられたら…!

「ア…、あんっ!」

 うわっ!また変な声が出た…。何であんなに高い声…!

「衛くん、可愛い声」

 舌でペニスの先を突つきながら、フィオレは笑った。
 指で根元から先に向かって扱いていく。オレは羞恥しながらも、その刺激にもう限界を感じていた。

「もっと聞かせてよ」
「…もう、…出…る。離せ」

 張った袋を同時に揉まれて、そのせいで押し出してしまいそうだ。

「いいよ、出しちゃっても」
「離せよ…!」
「まだ駄目」

 フィオレは再び咥え込むと、奥まで口に含んだ。フィオレの喉に先端がぶつかる。

「馬鹿…、口ン中に出ちゃうぞ」
「……」

 咥えた唇を何度も上下させるのを止めない。
 ・・・だ、駄目だ。本当にもう我慢出来ない。

「フィオレ!お願いだから、離せ」
「……」

 フィオレを押し退けたい。口から引っ張り出したい。けれど腕が動かない。
 オレはパジャマの上着に袖を通しているだけだ。後ろに両腕を回され、絡んだ袖通しを結ばれて腕を縛られている。
 肌寒くなって来たので、長袖のパジャマに替えた途端にこうだ。

 どんな結び方をしているのか、まったく解けない。無理に腕を抜こうとすると手首が痛む。
 それにフェラが始まってからは充分に力も入らない・・・。

「ん…」

 ジュプジュプと淫らな音を立てて、フィオレは唾液に塗れたオレのペニスに食らいついている。
 美味いものじゃないと思うのに、何でこんなにしつこく頬張れるんだろう。

「あぅ…、んん」

 閉じようとするオレの足を思い切り両手で押さえて開かせている。そして口だけで、咥えたペニスを愛撫する。
 フィオレの口の中で、舌が亀頭を舐め回し続けている。

「う…あっ!…あっ!あ…んっ!!」

 声が飛び出して来る。駄目…だ!出る!

「フィオ…出…る!!」
「…んんっ!」

 思い切り強く吸われた。その瞬間、強く閉じた瞼の裏がスパークして、オレは射精した。

「−−−!!」

 あ…。

 射精と同時に、思わぬ力が発揮されたみたいで、オレは無意識に腰を引いたらしい。
 ふいを突かれてフィオレは口からオレを逃したようだ。

 フィオレの口に埋もれていたペニスが彼の口先で震え、飛び出したザーメンがフィオレの頬に飛び散った。

「…あっ」

 フィオレの頬から顎へと白い液体が流れる。
 ヤバい。・・・いっぱい出る!

「す、済まない…!」

 思わず謝ってしまう。だが、口の中で出してしまうより良かった。飲まれるのは嫌だ。

 端正なフィオレの顔をオレの精液が汚してしまった。
 …でも、少し快感が込み上げて来た。かける行為に悦楽を感じるのは男の本能なんだろうか。

「もう…。ちゃんと僕の舌の上に出してよ」
「…済まん」

 また謝ってしまった。何故…!

 フィオレは唇の周りと自分の指を舐めて、オレが放ったものを舌で掬い取った。
 何の抵抗もなく喉を鳴らして呑み込んでいる。

「フィオレ…、やめろよ」
「僕、嫌じゃないもん。君のならいくらでも飲んであげるのに」
「駄目だ!…そういうの、嫌だからな!」
「判ったよ」

 …判ってない!

 フィオレはオレをもう一度咥えると、先端に残ったものを、舌先で舐め始めた。
 その舌の感触で、また気持ち良くなって来るじゃないか。

「離せよ!それに、この腕も解け!」
「次は僕の番だよ。ちゃんとしてくれるんなら解いても良いけど」
「オレはしないぞ?だってお前が勝手に始めたんじゃないか」
「でも自分だけイクなんて、ズルイよ」

 ……そりゃそうだけど。

 でも、オレの意思を無視して始めたんじゃないか。オレが良くしてやる必要がどこにあるって言うんだ。

「ほら、もうお終い」
「僕はどうなるんだよ」
「…自分で済ませろよ」
「衛くん、冷たい」

 この状況でどうしてそんなことが言えるんだ。
 オレは腕を縛られていて、自分の意思じゃなくフェラチオされて射精したんだ。
 フィオレが相手じゃなきゃ、誰が…。

 「腕、解けよ」
 「何だ、本当に解けなかったの?」
 「どういう意味だよ」
 「別に。・・・袖が絡んでるだけじゃないか。こんなんで動けなくなるなんて、君も器用だね」


 オレのせいじゃない。・・・パジャマのせいだ。

 フィオレに手助けされて、簡単に腕は自由になった。
 本当に、ただ袖が巻きついてるだけだ。
 でも、さっきは本当に締め付けられて動かせなかったのに。

 「…フィオレ」
 「何?」
 「……服、脱げよ」
 「いいの?」 

 いいも何も、オレだけ気持ち良くイッてこのまま放って寝るのも。
 でも、合意でやるんじゃないからな。今日はそんなつもりなんてまったく無かったんだ。

 「衛くん、その気になってくれて嬉しいな」
 「その気になってなんかなってないぞ」
 「じゃあ、すっかりその気にさせてあげるよ」
 「一回だけだぞ?」
 「最初はね」

 このパジャマが悪いんだ。
 袖が絡むから。腕を縛られなきゃ、ちゃんと逃げられたのに。


 …仕方ないんだよな。今夜、長袖のパジャマに替えたのが悪かったんだから。

 ■END■

 なんとなく嫌がってない積極的なまもるたんが書いてみたかったのですが。
 どうやら思わせ振りで相手を焦らすのが、まもるたんはお得意なのかも?
 以前書いてたものです。
 まもるたんが軽過ぎるのでどんなもんかな?とか思ってましたが、まぁ何でもありでいいような気になりましたので、掲載。
2004. 11.06    >゜))))彡

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